CORNEILLE NOIRE+++2.a name is dark
翌日麻智子が学校へ行くと、チャイムが鳴った後にうしろの席の彩が話し掛けて来た。
「ねえ、優ちゃんがまだ来てないんだけど」
「そうなの? もしかして、昨日のが効いちゃったのかな……」
それを聞いて彩は苦虫を噛み潰したような顔をする。
昨日、映画へ行こうと言い出したのは彩で、じゃんけんに負けた二人はホラーを見ろと言い出したのだった。
「でもホラー映画見て翌日まで寝込むなんて聞いた事ないよね」
当たり前だ。
「そりゃあ、まあ、そうだよね。風邪でもひいたんじゃないかな?優ちゃん」
「そう……だよね。早く治るといいね」
「ね。あ、先生来たよ」
担任の斎藤恭一が教室に入って来た。
「起立、気を付け、礼」
「おはようございます」
「おはようございます。ではいつも通り出席をとるんですがその前に少し重要なお知らせがあります。
青島さんが軽い病気で入院されたそうです」
教室が少しざわめいた。
「まあ、軽い病気なのですぐ退院できると。確か手術か何かやるのかな」
青島の右前の席に座っている生徒が手を上げた。
「先生、軽い病気って何の病気ですか?」
斎藤はまるで他人事のように、頬を掻きながら右上を眺めた。
「いやあ、先生は病名は聞いたんだが……、その。ちょっと、ほら。病名が長くてだな」
「覚えてないんですか?」
「ここまで出てるんだけどなあー」
先生あほだー、と男子が騒ぎはじめる。
「誰があほだ、こら!」
「せんせーが」
「なんだとお」
二人のやりとりに教室が和やかな雰囲気に包まれる。
「はい、じゃあ仕切り直して出席を取ります。あがつまー」
昼休み、彩が学校の横のコンビニエンスストアに行ってパンを買うのを待っていると別クラスの聖が訪ねてきた。
「2年4組の皆さんこんにちはー。10組からはるばる志賀っちゃんが……あれ、すだっちだけか」
一緒に食べるつもりだったのか、右手には少し大きめの弁当箱を携えている。
「あやっぺはパン買いに。でさ、優ちゃんなんだけど」
「どうした」
「軽い病気で入院したって先生が言ってて」
「入院?」
「それで、病名言わなかったんだ」
「……言わなかった?」
「長くて覚えてない、って」
「ふーん、長くて、ねえ」
聖は、朝の斎藤とは逆に左上を眺めながら麻智子の話を聞いている。
少し間を置いた後、弁当箱を近くの机に置いた。
「……ま、いいか。すだっち一緒にごはん食べよ。この机とイス大丈夫?」
「それ寺田のなんだけど、図書委員で呼び出し喰らってたから大丈夫」
「よし、書庫整理バンザイ」
「書庫整理?」
「まあ、勘だけど」
彩が走って帰ってきた。
「昼休みあと何分ー?」
「急がなくても大丈夫だから、あと30分あるから。落ち着いて」
「あやっぺの机ってそこなんだ? じゃあ3人で食べようぜ」
「何それ、たまごサンドはいいけどもう一つは新製品?」
「うん。イタリアンマフィンだって」
まさかの駄洒落だが彩と麻智子は気付かなかったらしい。
「なにそれ?あやっぺもヤマミチ製パンも勇気あるねー」
「いや、マフィアじゃねーのかよ!」
「え、何それ?」
「ほら、映画でシチリアとかにいる奴」
「あ、ほんとだ。シチリア島名産のピスタチオ入りだって」
一応そこまで徹底してるんだ、と聖は少し感心した。
「いやそうじゃなくて……、いいやもう。ところですだっち、優ちゃんの入院したのってどこ?」
「私は聞いてないな、放課後職員室に行って聞きに行こうよ」
「そうだな」
弁当箱を開けると大好きなアジフライが入っていたが、それにも関わらず聖は少し浮かない顔をしていた。
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