百聞は一見に如かず、というけれど
こんな光景が信じられるか?

目の前にあるモノを視覚で捉え、理解したとき
ひどい脱力感に襲われた



歪んだ時間と狂った世界

第07話
呆然



「有山さん!」

蟹澤が止めてくれなければ、俺はどうしていただろう?
気が済むまで山城を殴り続けていただろうか?


「ふざけんなよ・・・!」
我に返った俺は、一目散に外へ走り出していた



―何故彼を追う?
分からない

―助けたいのか?
それは・・・多分違う

俺は腹が立った
山城に対してだけじゃない、他でもない俺自身に


あのとき、俺は一瞬だけだが
山城の言ったことに納得した
このまま斎藤が死ねば、皆を疑う必要はないんだ・・・と
本気でそう思った



どれくらい走ったのか?
ふと、名前を呼ばれていることに気が付いた

「谷さん・・・」
俺を追いかけてきていたのは、谷さん
気付いていなかったが、何度も俺を呼んでいたらしい


「まったく、少しは考えて行動したらどうだ?」
結構な距離を走ったようで、谷さんは肩で息をしている
「すみません・・・」
ここに来てから、どうも神経過敏になっているようだ





ウソ・・・だろ?

俺たちは呆然と立ち尽くした
信じられない


谷さんと会い、斎藤を探し始めて1時間程度
ようやく斎藤を見つけることが出来た
が、もう手遅れだったようだ



でも、なんで・・・
どうやったら・・・
こんな場所で・・・ こんな死に方が出来るんだ?

斎藤は死んでいた、まるで交通事故にでも遭ったかのように・・・
骨も内臓も潰れていた、タイヤの跡が体にあった

それでも、周りには何の被害もない
車等が入り込めるスペースも、勿論ない

俺たちは、皆を呼びにいくので精一杯だった





小屋に戻ると9時を回っていた
腹は空腹を訴えているが、何かを食べる気にはなれない




   

'06-05-15