そんな筈はない―

心の中で叫んでも、誰にも届きはしなかった
俺は何も知らない
俺は何も分からない

今となっては、どうしようもない事だ



歪んだ時間と狂った世界

第19話
夢厭



夢を見ている
多分、感覚的にはそういう感じだと思う
普段と違う所があるとすれば
もう一人の自分を見ている訳ではなく、その場に自分が居る

辺りは暗い・・・
恐らくは夜、見上げた先に星が瞬いている
夢の中で俺は、隣に居る誰かと楽しそうに話をしている


 『へぇ・・・それで、夢は叶ったの?』
 『そうね、叶った・・・と言えるかもしれないわね
  今は教師をやってるんだもの』


ここで気付く
これはあの時、松野さんと話していた時の記憶だ
こんな会話をしていた憶えもある

しかし、何か違和感がある―
あの時は、なかった何かが・・・ある


それはナイフだった
俺の手に、大きなナイフが握られている



一瞬の出来事だった
俺の意に反して手が動く
手に持ったナイフが肉を裂く、不気味な感触が伝わってくる
更に何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も
彼女の身体に突き立てる





必死に自分の体の暴走を食い止めようとしている時
唐突に場面が変わった


この場面で、俺の目の前には蟹澤が居た
崖の下を見下ろしているようだ

その蟹澤の方へと歩みを進める、俺
蟹澤もこちらに気付き振り返った
不思議そうな顔で話しかけてくるが、今の俺には聞こえない

すると、俺の口が勝手に動き出す
音がない為何を言っているのか分からないが、崖下を指しているようだ

やはり不思議そうな顔をしながらも、下を覗き込む蟹澤
俺の体が不意に動いたかと思うと、蟹澤は崖から転落していた
突き落としていた


驚く意思とは反対に、崖に背を向け歩き出す






―お前が・・・殺した
 違う

―殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した
 違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う



 オ 前 ガ 殺 シ タ




   

'06-07-24