あんたみたいな人になりたくないから ――傍観者 「そこでなにしてんの」 そうしゃべりかけられて俺は振り向いた。 そこにいたのはうちの担任の長谷川だった。 「…あんたに関係ないだろ」 「教師に向かって、『あんた』か?」 長谷川は俺の隣にきて同じように窓の外を見ていた。 俺は別にこの風景が好きでここにいてるわけじゃない。 「知ってるぞ、お前がクラスのやつらから何をされてるか」 そのこと を不意に会話に出されてすこし身がすくんだ。 そしてソレを知っていてなにもしていないことにいらだちが募った。 「知ってて、ほったらかしてたんだ」 「気づいたのは最近さ、なにもしてやれなかったを後悔した」 気づいてやれなかったこともな。 と、補足をつけて俺の顔を覗き込んだ。 最近つけられた痣が少し痛んだ。 「今日のクラス会でそのことを取り上げるつもりだ」 「な、そんなことしたら」 俺は更なる仕打ちが怖くて仕方がなかった。 自分が起こっていることもどこか別の人格で 斜め上から見下せていればその傷もいくらかマシになっていった。 ーー耐えればなんとかなる そう考えていた。 今さら、この関係を良くしようなんて考えたくなかった。 「だから、お前は今日のクラス会には出席すんな」 突然、告げられたことに気が動転してか なにも言い返す言葉も思い浮かばなかった。返事すらも。 「お前がいない間にすべてを解決してやる」 解放された気がした。 束縛されていたわけでもないけれど。 「何か」から解放された気がした。 「ごめんな」 そう言い残して長谷川は俺の隣を去っていった。 空白の時間が流れ過ぎる。 外で遊んでいる上級生が見える。 でも、どこかいつもの昼休みと違った空白の時間が流れだした。 痣の痛みはすこし和らいだ気がした。 --------------------------------------------- 傍観者というお題でなにか書こうと思いました。 この人は結局なにをされていたかはご想像にお任せします。 ネタでもシリアスでも、なんでも。 「あんたみたいに なりたくないから」 っていう言葉は誰に向けたのか考えてみてください。 俺自身にすら答えはありませんが。 超短編でしたが、読んでくれてありがとうございました。 海苔