" あなたの思い出、一万円で買い取ります " 今日、チラシの裏に書いてあった。住所もなにも書いていない。 普通のチラシ。その裏に、それは書いてあった。 思い出 俺の名前は 林 仁志 今年で34歳の中年の親父になるのだろうか。 女房なんて人もいなく彼女もいない。 あるとすれば、ただ一つフラれた思い出ばかり。 そんな時に現れたのがチラシの裏の一言だった。 もしあれが思い出だというのなら 1万円で引き取ってもらおう。 次の日も、チラシの裏にそれは書いてあった。 " あなたの思い出、1万円で買い取ります " そこには、一緒に電話番号も書いていた。 早速電話してみよう。思い出が。あの思い出が消え去ってくれるのなら。 『プルルルルルル・・・ガチャ』 「メッセージは届きましたか?」 まるで、掛けてくるのを分かっているようなそんな口調だった。 疑問は微塵もなかった。それより焦っていたのかもしれない。 「・・・あの!思い出を買い取ってくれるって!!」 「落ち着きなさい」 「は・・・はい」 「思い出は買い取りましょう。ではどのような思い出を?」 「・・・・・・彼女にフラれた思い出です。それがすごく傷ついた・・・というか」 「分かりました。では、そのときにもどってみましょう」 そういうとなぜか眠たくなって受話器を持ったまま寝てしまった。 気が付けば近くの公園に居た。 『 俺と付き合ってほしいんだ 』 そうか、ここは俺が彼女に告白した場所。 今は思い出を思い出しているのかな 『 ごめんなさい 』 『 ど・・・どうして!? 』 『 好きな人がいるの 』 そうか、初めは俺断られたんだ。 でも、俺は―――・・・ 『 俺を好きになってください!ただどんな人よりも俺は貴方が好きだ! 』 『 ちょっと・・・やめてよ・・・ 』 『 あなたを本当に俺は愛しているんだ! 』 恥ずかしいくらいの大声で俺は叫んだ。 結果はOKだったっけ。 あんなに好きになってくれる人は初めてだ・・・って言ってくれんだよね。 それからもいろんな思い出がプレイバックされた。 遊園地での彼女とのはじめてのキスの思い出 映画館で見たあの恋愛映画の思い出 ただ一緒にいるだけで幸せだった思い出。 『 もう別れてほしいの 』 その理由が分からなかった。 だから、聞き続けた『 どうして 』 でも、君は言ってはくれなかった。 『 ごめんなさい 』 その日から、携帯を変えられて。音信不通で。 でも、ただ君がスキだということだけが残っていった。 なんで、君は俺に別れを告げたのだろう。 「これでも、あなたは彼女との思い出を捨て去りたいですか?」 ふと現実に戻った。 そうか、俺は今電話で話してる最中だったんだ 「彼女との別れだけを忘れるなんて器用なことは出来ません。彼女に関連する物全てを断ち切らなければ記憶は消えません」 ・・・何も考えられなくて、涙だけが溢れた。 「それでも、あなたは彼女の思い出を私に売ってくれますか」 「忘れたくありません!!」 ガチャっと受話器を切った。 そして、ドアを開けた瞬間・・・。 「仁志・・・」 「か・・・和美!?なんでここに居るんだよ。って・・・」 「ごめんなさい。突然、海外に行かなくてはならなくて・・・だから別れたの・・・」 その後俺は和美とよりを戻した。 あの電話があったから俺は和美との大切な思い出を思い出されたのかもしれない。 でも、もしあの時俺が思い出を売っていれば。和美は俺の部屋に来なかったのではないのだろうか。 End