斬らなきゃ斬られる



   斬 zan




「どうか・・・しましたか?」
「いえ・・・なにも」

時は戦国。みなが武器をとり、戦いに赴く。
ある人は名誉を守るために、ある人は身を守るために、ある人は人を守るために
人は武器をとりそれらを守るために力をつけていった。

「心が乱れてますよ」
「先生、何故人は殺されなければならないんですか」
「・・・」

彼の名前は北条 冴介。
戦いは好まぬ、穏やかな青年。

「人は殺され、殺し、それになんの意味があるというのですか」
「斬らなきゃ斬られます、守らなきゃ殺されてしまう」
「・・・それは分かってはいますけど!!」

語尾を強めた。
どこか、腑に落ちないところがあるのだろう。
けれどなにも言えない。言ったところで変わることのない今の世の中。
それも然りと分かっていた。だからこそ、腑に落ちない。

「その人にも又、大切な人がいるんだ。なのになんで人は戦わなければ」
「そういう世の中になったから、としか言いようがありません」
「だとしたら、俺はその世の常を怨みます。それが正義だと思えません」
「人を斬りたくはありませんか」

彼は疑問に思った。
何故、先生がこんな説明をするのか分からなかったからだ。
きっと何かある

「真剣に、そして素直に答えてください」

迷いはない

「斬りたくありません」

破門―――・・・。
ここは人を斬るのに教わる場。
そこで、斬りたくないなどといえば破門は確実。
それは合言葉のように。

「そうですか、では」

破門か。そう思いぐっと拳の握り締めた。

「試合という形で最後の試験です」

刀を先生が抜いた。
汗が吹き出る。先生は人を何十人と倒してきた人。
それこそ人を斬るのにためらいもなく、切り捨てる。
まさに、鬼。

「はやく、取りなさい刀を」
「・・・はい」

刀を抜く。
今は木刀。もちろん先生も。
ここは戦いの場ではない、だから真剣などはいらない。
先生はいつもそういって、木刀を使っている。
けれど、今は相手は真剣。木刀では勝てるわけが・・・。

「始め・・・」

瞬間先生がいなくなったような気がした。
不意に右に見えた、刀の燐片に対応して木刀をそこめがけて縦に振った。

" カーンッ "

乾いた音がその場に響いた。
防げた・・・でも次は・・・。
つばを飲み、また先生を見た。

次が来る・・・

「・・・なにも見えない!!」

" ドスッ・・・ "

鈍い、鈍い人の身体を叩く音。
その音に気が付いてから腹の痛みを感じた。
先生の刀は俺の腹に当たっていた。

「グッ・・・アァ!!いってッ」
「峰打。刺すことはなく刃の裏側で相手を打つこと」
「・・・・・・」
「相手を殺さずに相手を仕留めるときに使います。確かに木刀はいい。だが木だとすぐに切られてしまう可能性がある」

今の時代じゃ考えられないが、当時はそんなにいい材質の木は売ってなく
適当にとってきたものを、適当に加工しただけのもの。
木が刀に切られるのは当たり前のこと。

「木で勝つことは出来ない。真剣には。だからあなたは人を殺さずして仕留めたいなら峰打を完全に習得しなさい」
「・・・はいっ」


「あなたは才能がある。きっと今後の世界に役に立つでしょう」



" カラン・・・ "



木刀は半分に切れていた。