◆鬼の事情◆
-双子剣士編-
【2】
あれから慌てて用意して、本数の少ないバスにかろうじて乗り
海にたどり着いたわけだが、夏休みに入ったとはいえ大人はまだまだ仕事なこの時期
子供だけでは少しばかり遠すぎるこの小さな海水浴場に人はあまりいない
隣町に大きくはないが流れるプールができたというのも、人が少ない原因の一つかもしれない
小さいといってもそこは海水浴場、一応更衣室とシャワーは完備されている
もっとも、更衣室は更衣室といっていいのかわからないような物だが・・・
「 わー!!うみうみー!!! 」
家から水着を着ていた小学組の信二、ヤス、真美ちゃん、年雄はすでに海に入ってはしゃいでいる
「 子供は元気だなぁ・・・ 」
「 おい、何してんだ、着替えないのか? 」
縞はそう葉月の頭をつつくと男子更衣室の隣にある女子更衣室に入って行く
ま、折角きたんだし着替えて泳ぐか
葉月は更衣室に入ると、薄暗い中、木でできた格子板の上を踏み歩く
ギシギシという音と足に伝わる湿った感触、カビのような臭いが、独特の不快さをもよおす
あーもう、なんでもうちょっと綺麗にできないのかなぁ
せめて換気だけでもよくすればいいのに・・・
ブツブツ葉月は文句を言いながら手早く着替えて外に出た
暗いところから出るとより一層太陽がまぶしく感じる
「 あーまーぶしーっ 」
「 おっ葉月、早いな着替えるの 」
後ろを振り向くと頭にゴーグルをつけた縞が立っていた、その縞の格好をまじまじと葉月は見た。
・・・
ちょっとまてよ
こいつが着ている水着・・・まさか・・・
「 縞、その水着・・・ 」
葉月に水着を指差されると縞は何食わぬ顔で反応した
「 少華のを借りたけど何か? 」
「 やっぱり母さんのかよ!それ母さんの学生の時の水着じゃん!
あーもうなんでスクール水着なんだよ!こんなところでそんなベタな展開いらねぇよ! 」
「 いいじゃないか、水着なんてなんでも。似合ってるだろ 」
縞はフフンと鼻をならして腰に手を置いてポーズをとっている
似合ってるとか似合ってないとかじゃなくて、今時学校以外でスクール水着を着る奴なんていないよ・・・
「 まぁもう別にいいけどさ・・・次はちゃんと水着買えよ 」
縞ははいはいと適当に返事すると信二達の方へ歩いていった
やれやれ、まぁ見た目にはちょっと変わった女子高生くらいにしか見えないだろうけどさ
そういえば縞がもし女子高生だったら、制服とかも着るんだよな・・・
想像すると意外に変じゃないなって何妄想してんだ俺、別に俺は制服フェチでもなんでもないぞ
つっこみを入れながら葉月は自分の頭を叩いた。
海辺に着いて足をおくと冷たい波が砂と一緒に足もさらっていきそうなこの感覚
うへ〜気持ちいい・・・と葉月が変な顔をしていると小学4人組に笑われた
「 葉月にい、なんかおじいちゃんみたいな顔してる〜 」
真美ちゃんと信二と年雄は葉月を指さしてそうクスクス笑う
子供はやっぱりこういう無邪気さが一番、決してロリコンじゃないぞ。葉月は誰にとでもなくつっこみを入れた
「 まぁ精神的におじいさん、という可能性も否めないね。
最近の若者は精神年齢ふけてるらしいから 」
「 ヤスてめぇ・・・ 」
ったく、本当にこいつはいちいち言動がかわいくない。
真美ちゃん達とえらい違いだ、これだから眼鏡キャラは苦手だよ。葉月は溜息をついた
「 お前ら人をじじいじじいって、一番年寄りなのはシ 」
「 葉月、塩水沢山のんだら、塩分過剰で人ってどうなるか実験してみるか 」
「 い、いえ・・・結構です 」
「 あははは!お兄ちゃん縞に弱いねー! 」
信二はゴーグルごしに葉月達を見て笑う。
弱いっていうよりも、縞は冗談なのか本気なのかわからないから怖いという葉月の思いは信二達には伝わらなかった。
「 なぁ!あの岩まで誰が一番に泳いでつくか競争しようぜ!ヨーイドン! 」
年雄がそう言って50メートル程先に見える岩へ向かって泳ぎだした
「 あ!ずるいよ年雄ったら! 」
他の3人組も一気にバシャバシャ泳ぎだす
葉月もこれは男としてそして年上として負けてはいられない
「 縞!俺らもいくぞ! 」
「 よし、負けた方が全員にジュースおごるんだぞ 」
「 のぞむところだ! 」
・
・
・
「 兄貴さんきゅう! 」
「 ごちそうさまでーっす 」
「 ・・・くそぉ俺のなけなしの小遣いが 」
結局一着は縞で二着が葉月。小学組には勝ったものの、
縞には負けたのでジュースをおごるはめになった
「 縞すごく速いよねーびっくりした!泳ぎならってたの? 」
信二は目をまるで太陽のように輝かせながらやや興奮気味に喋る。
「 そうだぜ、俺、縞が泳ぎ得意なんて話し聞いてねぇぞ 」
縞の運動神経がいいのは葉月も前からしってはいたが
少し自信があっただけに、縞に負けたのが悔しいらしい
「 お前ら私を一体いくつだと思ってるんだよ。泳ぎくらいマスターしてるって、あぁお茶うま 」
「 ねぇねぇ今度はこれであそぼ〜 」
「 お、さすが真美、ビーチボール持って来たのか!兄貴もしようぜ 」
「 えぇお前ら今泳いでハァハァ言ってたんじゃないのかよ 」
「 それとこれとはべつだよべつ、ほら行こう! 」
「 や、やすませてくれぇええぇぇぇ.... 」
そうやって何時間海で遊んだだろうか、さすがの小学生もヘトヘトになってきて日陰に座って雑談していた
「 なぁそろそろ腹とかへらねぇ? 」
「 そういえば、そろそろ・・・ 」
子供4人組はお腹をおさえてひもじそうな声をだしている
そういえば葉月は朝ご飯すら食べていない。
お腹と背中がくっつきそうなくらいに今葉月は猛烈に空腹だった
「 今何時なんだろうな・・・ 」
時計を見ようと荷物をあさっていると、葉月はなんとなく空が気になった
「 雨、ふりそうだな 」
「 え?何いってるんだ兄貴、雨なんてふりそうにないくらい晴れてるぞ。雲はあるけどー・・・ 」
年雄は空を見て首をかしげている
それにつられて全員が空を見る
「 いや・・・なんかふりそうだなって・・・なんかそんな気がするんだよ 」
今の空をみると”雨”しか連想しない
何故だろう、こんなに晴れているのに・・・そう思っている葉月自身もよくわからない
目を閉じると今にも雨音が聞こえてきそうな、葉月はそんな気がしてならない
「 きのせいじゃないの?葉月にいの 」
「 真美ちゃんの言うとおり葉月さんの勘違いじゃない? 」
小学組が口々にそう言う中、縞だけ荷物を片付けだしている
「 あれー?縞どうしたの? 」
「 お前ら早く着替えて荷物片付けろ 」
?マークを頭の周り一杯にとばしている信二達に縞はもう一度促した
「 雨が降って、もし雷がなりだしたりしたら危険だ
だから早く着替えて荷物をまとめとけ 」
縞の言葉を聞くと信二達は慌てて更衣室へ向かった。
「 な、なぁ縞、いいのかあんな事言って・・・ 」
不安そうな葉月をよそに縞は、これ持てと鞄を一つこっちに投げてよこした
「 お前が雨が降ると感じたなら必ず降るよ 」
「 でも感じただけだぜ?本当になんとなく 」
「 感じたのなら降るよ 」
「 なんでそこまで俺の予想をあてにできるんだ? 」
「 気づいていないだけでお前は少しばかり変ってるんだよ 」
「 え?変ってるって? 」
「 ほれ、私達も早く着替えるぞ 」
といいのこして縞は背中を向けた
変ってるって・・・なんだよ、よくわかんねぇな、勘が鋭いとかそういう事か?
葉月は首をかしげつつ縞の後を追って葉月は更衣室へと向かった
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