◆鬼の事情◆
-双子剣士編-
【6】
「 うっ・・・ 」
縞は目をあけた、酒をのんで盛り上がった途中までは記憶があるが、それから全くなにがなんだかわからない
額に痛みを感じて手をやってみると、少しばかりの血が手についた。
「 私いつ頭怪我したんだ? 」
よく見てみると隣には葉月が寝ている
隣のフスマ越しの部屋から人の気配がするので、フスマを縞は開けた
スッという音と共に明らかになった部屋の真ん中には
祥鳳と瑞鳳が背を向けて、なにやら言葉を交わしている
その二人の間には、布団が敷いてあり先生が寝ていた
「 おぉい祥鳳瑞鳳、私酔ってから記憶がないんだが、何かしなかったか 」
よろよろと部屋に入ってきた縞を祥鳳と瑞鳳は一瞬ジッと見てから座ったままふかぶかと頭を下げた
「 おっおい、一体なんの真似だお前ら 」
驚きを隠せないでいる縞をよそに二人は淡々と話を始めた
「 私達二人は、この地よりもずっと離れた森の中で一族共々暮らしていました。
私達一族はとても大人しく、悪く言えば臆病でしたが幸せでした
そしてその一族もあることがきっかけで私達二人をのぞいて一人もいなくなりました
私達は逃げるようにしてこの地にたどりつき、また同じような草木生い茂る山の中で暮らしていました
それから何十年か経ったある日、一人の人間が山の中で倒れていました
私達はその人間を介抱しました。元々私達一族はそういう事だけは得意でした
少しの時がたったころ、その人間は回復し私達に礼をいって
自分がもっていたお弁当やおにぎりなどをくれました
そして家族にも礼をいいたいと言ってきました
私達は、家族はいない、二人しかいないと答えました。
すると人間は驚きました、そして私達に言いました。
うちにこないか、と
私達は迷いました。おにぎりを食べながら迷いました。
このまま信用してついていっていいものか
でも私達は思いました。この人間と一緒に暮らしたい、と
そして私達はその人間の養子となりました 」
「 まさかその人間というのは・・・ 」
「 父上でございます 」
「 それから数年がたち、私達には父上の体に病の繭があるのが見えました。
私達一族にはそういう能力があるのです
勿論、最初は医者へ連れて行きました。でも何も変わりませんでした。
私達はどうしても父上を助けたかった、血の繋がっていない私達を自分の子供のように
かわいがってくれた父上を、竹刀を構えた凛々しい父上を・・・ 」
「 だから私達二人は毎日父上にあるものを飲ませていましたわ 」
「 あるものとはなんだ? 」
「 私達の、血でございます 」
「 血・・・?何故血なんて 」
「 私達一族の血には、すこしばかりの治癒の力があります
だからのませていました、しかしそれは人間には毒にもなります
だからすこしづつしか与えることができませんでした、でもそんな少しでは
父上の病魔の足を遅くしているだけにすぎず、止めることはできませんでした。 」
「 ちょ、ちょっとまて 」
そこまで祥鳳がしゃべった所で縞が割ってはいった
「 さっきからお前らは先生の事を ” 人間 ” と呼んでいる
しかも山の中で何十年?それじゃお前らは・・・ 」
「 はい、私達は縞様と同じ部類の生き物でございます 」
そう言い終わると、祥鳳と瑞鳳の目は金色に光を放っていた
例えるなら猫のような細い瞳孔が金色の中に潜んでいる
「 そ、そんなお前らが人間じゃなかっただなんて、気づかなかった・・・先生だって何も・・・ 」
「 勿論父上でさえも私達の事は知りませんわ。
私達も今日の今日まで縞さんが私達と同じ、俗に言えば”妖怪”とでもいいましょうか
そうだとはしりませんでしたし気づきもしませんでした
でも先程、縞さんが酔っ払ってその姿をあらわにした時に知りました 」
そういわれて自分の頭を触ると硬くて長いものが二本指に触れた
それが角だとわかった時、縞は酔いが回ったせいで元の姿に戻っている事に気がついた
「 葉月さんが寝てしまった後も縞さんはお酒をのまれてよっぱわれていましたわ
そして父上も私達の目をぬすんでいつのまにかお酒を口にして
二人とも完全にへべれけになっていましたわ。
私達はその間に台所で、毎晩父上に漢方薬としょうして飲ませている
私達の血入りの飲み物をつくっていました
その間に縞様と父上の二人は・・・ 」
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「 えぇーいこのくそじじいめがまた胸をさわっただろう! 」
「 はっはっは!どうせまな板のような乳じゃろがうだうだいうでないわ! 」
「 なんだとこのやろう!お前の顔もまな板のようにぺちゃんこにしてくれる! 」
「 ほー師に勝てると思うてか!どこでもかかってくるがよいわーはっはっはっは! 」
「 ・・・ねぇ、姉さま。これ役に立っているのかしら・・・ 」
「 役に立とうと立たまいと、しないよりはましだ・・・ 」
「 でも・・・父上の病の繭はどんどん大きくなっていますわ・・・私それを見るのが辛いんですの・・・ 」
「 私だってそうだよ・・・毎日病の繭がどんどん大きくなっていっている
そしていつかその繭が割れてしまうだろう。
とめられないとしても最後まで私達は父上の為につくそう・・・ 」
「 ・・・おぉーいしょうほ〜みずほ〜ちょっと水をくれないか〜 」
「 きゃ!しし縞様!どうなさったんですかそのおでこ!血がでてるじゃございませんか! 」
「 あぁーこれか〜これは先生が木刀でガツーンとやりやがったんだよ
ったくあのくそじじいめが・・・おっそれはなんだ? 」
「 あっ・・・これはその・・・父上に飲ませている漢方薬で・・・ 」
「 おっ!そうなのかなら私がもっていってやるよ、大丈夫大丈夫酔ってない酔ってない 」
「 まっまってください!縞さんまだ・・・! 」
「 あぁどうしましょう、縞様もっていってしまいましたわ・・・ 」
「 仕方ない、また後で同じものをつくって飲ますしかないな 」
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「 そして私達は台所をすこしばかり片付けてから、部屋へと戻りました
すると机に額から血を流したままつっぷして寝ている角がでて髪の毛が銀色にかわった縞さんと
机の横で寝てしまっている父上がいました
縞さんの姿にも驚きましたが、父上を布団に移動させようとした時、私達は驚愕しました
病の繭が消えていたんです
ありえない事でした、私達が10年近くかけてもなおせなかったものが消えているんです。
でも机の上には先程飲んだらしきコップのふちに血のようなものがついていました
そしてわかりました、何故父上の病が消えたのかを。 」
「 縞様の血が、父上の病を消し去ったんでございますわ
きっと額からでた血が数滴コップを運んでいる時にはいってしまったんですわ 」
その言葉に縞はもう一度額に手をあてた
「 勿論、縞様の血に治癒力があるかどうかはわかりませんわ
私達のような生き物・・・妖怪の血は人間には大概は毒でございます
きっと色んな事が重なって、父上の病をけすのに最適な飲み物をつくりあげたのでしょう
でもそれは私達の血で同じ事ができたとは考えれません 」
「 な、なぜだ? 」
「 どんなに偶然が重なったにしても、そこまで強力に、かつ人間に毒にならない量を
与えるには、よほど力の強い血じゃなければできないことなのです。 」
「 そうなのか・・・でも少しでも分量が多かったりしたら・・・ 」
「 父上はもう生きてはいなかったかもしれませんわね・・・ 」
瑞鳳の言葉に縞は複雑だった。
酒をのんでよっぱらったばっかりに・・・先生が死ななかったからいい様なものを
私という奴はなんて馬鹿なのか、と自分を心の中で罵っていた
「 あぁでも本当に、これで父上は元気になります
たとえ人間としての寿命があとわずかにせよ、元気でいてくれるのがとても嬉しいんです 」
祥鳳と瑞鳳は涙ぐんで縞に感謝した
縞は複雑な心境ながらも、気持ちよさそうに寝息をたてている先生をみて
少しばかり口をほころばせた。
「 ねー縞〜。おじいちゃん元気になるといいね〜 」
「 あぁ、そうだな 」
次の日、昼食をご馳走になったあと
大きな入れ物に栗きんとんを沢山つめて
縞と葉月はその家を後にした。
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