◆鬼の事情◆
-怪事件編-
【3】
学校が終わってコンビニに寄って家に帰ると縞が
居間で何やら背中をむけてごそごそやっていた
「 ただいまー 」
「 あ、おかえり葉月、水煮缶かってきてくれた? 」
「 うんまぁ、今日の晩御飯に使うのか? 」
「 いや、こいつにあげようとおもって 」
" にゃ〜 "
こちらに体を向けた縞の手には黒猫がぶらさげられていた
その猫の尻尾の付け根には赤い紐みたいな物が結び付けられている
「 あぁ〜それで鯖。でもそれなら猫の缶詰で良かったんじゃない? 」
その問に縞は眉間にシワをよせて口をひんまげて答えた
「 鯖の水煮缶だったら一杯入って安いから 」
「 結局それか、ケチだな 」
縞にゲンコツで頭を殴られている葉月の横で黒猫は今開けたばかりの鯖缶にかぶりついている
「 ・・・暴力反対、所でなんで猫なんて拾ってきたんだ? 」
「 いや、まぁ、気分 」
「 気分で拾ってくるなよ、なんか尻尾に紐ついてんじゃん、飼い主いるんじゃね? 」
「 あぁ、いるかもな、でも今こいつはここに居たいらしいし 」
「 まぁ確かに居心地はいいみたいだけどさ、飼い主いるなら返したほうがいいんじゃないの 」
縞は少し間を置いてから、そうだねそれがいい。と呟いた
「 おっなんだ猫じゃないか、どうしたんだ? 」
「 お姉ちゃんが拾ってきたのよ〜お父さん〜 」
ほぉーといいながら座布団に座る白髪が頭の大半を占めた老人は葉月の母親の父親
つまり、葉月の祖父にあたる。名前は薫宮 雄月(ゆづき)。この神社の神主をやってる
背格好はまだまだ腰も曲がっていないし今年で74歳になるのに若々しい印象だ
「 ねぇお姉ちゃんこの猫ちゃん何処でみつけてきたの〜? 」
葉月の母親の少華がご飯茶碗を縞に渡してそう聞く。
縞は面倒くさそうな顔をしながら答えた
「 山で山菜とって、川原でぼーっとしてたら茂みからでてきたんだよ
んで、なんとなく連れて帰ってきた 」
「 そうなの〜かわいい猫ちゃんよね、名前なんてつけようかしら 」
「 おいおい少華さん、まだこの猫が野良猫かどうかわからないんだから
勝手に名前とかつけちゃ駄目だよ 」
苦笑いしながら先走りする少華を静止したのは葉月の父親
名前は 薫宮 竹男。少華とは竹男さん少華さんと呼び合っている
竹男は婿養子で、休みの日だけこの神社の手伝いをしてるが
それ以外の日は大概サラリーマンの課長をしている。給料はそこそこだ
ちなみに少華とは恋愛結婚で婿養子になるならという条件で一緒になったらしい
こんな子供みたいな母さんの何処を好きになったのかと葉月が一度聞いてみたら
”そこがいいんじゃないか”
とデレデレしながら答えられた。
この妻にしてこの夫有り、という所だ
「 しかし縞さんが猫好きだったとは驚いたね 」
葉月の父親竹男が縞の膝に寝ている猫を見ながら笑う
「 あら!お姉ちゃん結構動物好きなんだから〜 」
「 ふーん、そりゃ初耳だな 」
縞はその会話を静かに聞きながら味噌汁をすすった
「 なぁ、縞ってさ 」
「 うん? 」
葉月の部屋に洗濯物をもってきて、それを箪笥にいれながら縞は振り返った
「 まじで動物好きなの? 」
「 好きだけど? 」
「 それじゃ今まで何か動物飼ったことあんの? 」
「 昔に一回鳥をかってたくらいで殆どないよ 」
「 なんで?好きならもっと飼えばよかったのに、反対でもされたの? 」
そう聞くと縞は少し目をふせて顔をあげた
「 お前らの世話だけでも大変なのに、動物まで飼えるわけないだろうが
全く、パンツだって自分で洗えないくせに 」
縞はクスクスしながら葉月をみる
「 う、うるさいなー!もう!パンツ広げるなよ! 」
ヒヒヒといって笑うと縞は部屋を後にした
” 本当、男の下着おおっぴらに広げて恥しいとかそんなの無いんだろうか
こっちが恥しいよまったく・・・でもなんかちょっと一瞬・・・ ”
葉月は縞が風呂に向かった後、母親の部屋に足をむけていた
さっき一瞬だけ影のはいった縞の顔が気になったからっていうのと
少しの好奇心から、かもしれない
「 なぁ母さん、縞ってさ、なんで動物好きなのに動物あまり飼ったことないんだろ
長生きしてるんだったら、沢山飼っててもいいのにさ。寂しさとかもまぎれるし・・・ 」
少華は髪の毛をとかしながら、鏡ごしに答えてくれた
「 つらいからじゃない〜? 」
「 つらい? 」
「 だってそうでしょ、動物は大概人間の一生よりも短い間しか生きないじゃない
お姉ちゃんはその普通の人間よりも長生きするのよ、つらいじゃない 」
”あ・・・
あぁ・・・そうか
そうだよな、縞は今まで何人か自分と共にすごしてきた人間の最後をみて来たんだ
それだけでもきっとつらい事なのに、好きな動物を飼うなんて・・・
やっぱり、つらいよな・・・ ”
葉月は自分がどれだけ無神経だったかを悔やんだ
「 俺、結構無神経な事聞いちゃったのかも・・・ 」
「 何聞いたのか知らないけど、お姉ちゃんは葉月の言う事なら気にしてないと思うわよ
でもどうしても自分がきになるならあやまってきたら? 」
少華はヘアブラシを机に置くと髪の毛を結びながら振り返ってそう言ってくれた
なんだかんだでやっぱり母親なんだなぁと葉月は珍しく感心した
「 うん、ありがと、お休み母さん 」
葉月はそういうと、少華の部屋のドアを閉めた
「 ・・・あれ?母さんの着てたパジャマ前後反対じゃね? 」
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