の事情

-怪事件編-



【5】




カンカンカンカンカンカン



踏み切りの閉まる鐘が聞こえる



鐘がなると同時に遮断機も下りていく


葉月はその遮断機が下りて行くのをずっと見ている


ここの踏み切りはいつも電車がくるまで遅いんだよなぁ


と、葉月がイライラしながら待っていると横を黒い影が通り過ぎた


その影は遮断機のすぐ手前で立ち止まっている。


制服姿で、スカートをはいていて髪の毛が肩までの背格好からして女の子



あんな遮断機の手前で待ってたら危ないのに、よほど急いでいるんだな



葉月がそう思った瞬間、女の子は遮断機をくぐりぬけて、線路の上に立った


葉月はあまりの驚きに、目をむくばかりで声をかける動作ができない



「 お・・・おい!ちょっ! 」



やっと声をだした時にはすでに、電車が視界に小さくはいってきている



「 なぁ!危ないって!やめろよ! 」



大声で叫びたいのに、声がうまく出ない


どんどん電車は大きくなってくる、女の子はこちらに背を向けたまま動こうとしない


このままじゃ間に合わない


やっと遮断機まで走って女の子の腕をつかむが、女の子は葉月の手をふりほどいてしまった




パアァァァァァァァァァァァァァァァァァ

キイィィィィィィィィィィィィ



電車がすぐそこまできている、とまろうとしてるブレーキの音もきこえる、しかし勢いのついた速さは止める事ができそうにない



駄目だ、この子 死んじゃう



” にゃ〜 ”



その時、女の子がこちらを振り返った



そして葉月の足元には黒猫が....




に・・ぉ・・・にゃぉ〜・・



「 ・・・にゃ〜にゃ〜ぉ 」



「 ・・・・・うぁーくそねみいぃ・・・なんだよぉ 」



目が覚めると、あの黒猫が葉月の腹の上で顔を洗っている


葉月は布団をもう一度かぶろうとしたが、たちまち誰かに剥がされた



「 なんだよじゃない!今何時だとおもってるんだよ! 」



「 んえぇ・・・まだ8時じゃん、なんでそんなに怒ってるんだよ・・・ 」



” ペシッ ”


縞は猫をだきあげると猫の手を使って葉月の頭を叩いて来た、軽い感触が葉月の頭に触れる




「 ほら忘れてる、昨日隣町までいくって約束しただろうが 」



「 あぁーそうだったごめんごめん、すぐ着替えるからまってて・・・ふああぁ 」



” あぁなんか目はれてんなー、そういや昨日泣きながら寝たもんなぁ・・・


ん?なんで泣いてたんだっけ



・・・あ ”




「 おい!しま!お前よくも昨日は・・・! 」



「 あ゛? 」



「 あ?じゃねぇよ、昨日俺の、その・・・ビデオ・・・ 」



縞は あぁアレの事ねと、溜息まじりに肩をすくめた



「 フフ 葉月が奥様属性だったとはねぇ 」



「 ち、ちげぇよ。ちょっと気になったからたまたま・・・ 」



冷めた目をしながら縞は葉月を見据える、葉月はなんだかうしろめたい気持ちになった。



「 あれさぁビデオにコピーしておいたんだ

早く着替えて飯を食べないと、家族全員で奥様の鑑賞会をするぞ 」



ニタァと笑みを浮かべる鬼に、ただただ葉月は下唇をかみしめて着替えを用意するしかなかった



「 今度は絶対見つからない所に隠してやるっ クゥッ 」







”―そうなんです、朝おきたら窓ガラスが割れてて・・・

はい、朝にうちの娘が発見しまして・・・それは酷い割れ方でした

音ですか?生憎私は不眠症で睡眠薬をのんでいまして

主人は酔って寝ておりましたし。娘はそんな音きいていないって・・・

本当気持ち悪いったらないですよ・・・”




”夜仕事からの帰り道にいきなり後ろからおそわれたんですぅ、なんか刃物みたいなもので

えぇもう切り傷だらけでぇ・・・

暴れて走って逃げたんですけどぉもう本当にこわくってぇ・・・

その時に変なことですかぁ?・・・とくにぃこれといっては・・・

猫の声がしたくらいでぇ・・・でもぉ次の日にぃ木が倒れてたって聞いてぇ

もう私こわくてこわくってぇ仕方ないですぅ”




「 まだやってたんだこの特集、よっぽど何もないんだな 」



葉月がホカホカの白いご飯とキノコと野菜の炒め物、それに味噌汁というメニューを食しつつ


テレビのワイドショーを見ていると、先日起こった怪事件の特集をやっていた


咲にいわれるまではあまり気にもしていなかったが、確かに中学の時に通っていた隣町らしい




「 なぁ母さん、このテレビでやってる場所ってさ、中学があった場所の近くだよな 」



「 あぁそういえばそうよね〜葉月は今日お姉ちゃんと隣町いくんでしょ〜? 」



「 あ、そっか今日行くの隣町なんだった 」



「 ウニャ〜 」



「 はいはい猫ちゃんもご飯ね〜 」



母さんの足元であの猫が缶詰をほおばっている


” そういえば夢にでてきた猫はこの猫なんだろうか


なんか、嫌な感じの夢だったな、変な気分 ”


葉月は最後に残っていた野菜炒めのキャベツの切れ端を口にいれて


身支度の用意をする為、食卓を後にした。




隣町までは電車の鈍行で40分程度、歩くには大分距離がある


だから隣町といっても、殆ど中学の頃に学校までの道のりをただ往復していただけなので


特にコレといって葉月に隣町の土地勘があるというわけではない。


でもやっぱり懐かしさはあるわけで、電車を降りるとしばしの思い出にひたりつつ辺りを見回す



「 あー、ひさしぶりー 」



4月の気持ちの良い風が葉月の顔にあたる、縞の髪の毛もそよそよと風になびいている。



田舎の駅独特のこの殺風景な感じ


錆びて何をかいているのかもはや分からない駅名のかかれた看板


そしてここ数年の間にやっと自動改札になった出口


たった2年くらい来なかっただけで、すごく懐かしく感じるのだった



「 ほれー葉月〜いくぞー 」



縞の日頃の服装は裾が膝丈の着物だ、しかし正月とか何か行事がある時に着るような着物ではなくて


昔の人が日常生活で気軽に着ていたような、そんな着流し的な着物だ


今日は隣町に出かけるとあって、長袖の大きめの黒のプリントTシャツに


ジーンズの膝丈のズボン、それにいつもの草履という、まぁまぁ普通の格好で来ている


勿論、角とかは生やしてはいない。黒髪に黒目だ




「 へいへい、いくよいくよ 」



葉月は猫が入った大きめの手提げ籠の持ち手を掴むと、真新しい自動改札口へと向かった




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