◆鬼の事情◆
-怪事件編-
【6】
改札を出た葉月達は、縞に促されるまま道を進んでいた
縞はキョロキョロ何かを探すでもなく、淡々と道を歩き進んでいく。
縞はあまりこっちの方に来ているはずがない気がするのに、何故こんなにすいすい進んでいけるのだろうか、葉月は首をかしげた。
籠の中にいる猫は寝ているのかとても静かだ。
外にでてから一声も泣かないんだから変に大人しい猫だな、とこれにも葉月は首をかしげた。
カンカンカンカンカン
独特の鐘の音が聞こえてきた、葉月達は踏み切りへと近づいている
” 夢でも踏み切りを見て、実際にも踏み切りを見るなんて
あれは正夢だったのだろうか・・・ ”
踏み切りには腰の曲がった少しハゲた頭のお爺さんと、その孫らしき男の子
買い物袋を持った大仏頭のおばさんに、相撲部だろう体格が横に大きい集団に、
これからどこかへ遊びにいくらしい自転車に乗った子供数人
それに、制服姿の女の子
「 あ、あのっ 」
「 ・・・?はい? 」
その後姿は何処となく、夢にでてきた女の子に似ていて、葉月はついついその子に声をかけてしまった。
何も考えずに話しかけてしまったので、何を言って取り繕えばいいのか全然分からない
「 すいません・・・なんか夢にでてきた人にそっくりだったもんで・・・」
” 何言ってるんだ俺、これじゃどっかのナンパ野郎みたいじゃないか・・・ ”
女の子は少し怪訝な顔をしたが、社交辞令の笑みを浮かべて、そうなんですか。と呟いた
「 それがもし私なら、すごい正夢ですね 」
「 ははは・・・いや、その夢にでてきた子が踏み切りで電車にひかれそうになる夢だったんで
どうも心配になって・・・いきなり本当すいませんでした 」
葉月が愛想笑いをしながらそう言うと、女の子は途端に顔色を変えた。
” あれ、なんかまずい事言ったかな・・・ ”葉月がそう冷や汗をかいたその時
「 ヤマグチリコ 」
葉月の後ろから声がした。女の子はさっきよりもさらに顔色が変っている。
後ろから聞こえた声は縞の声だった、葉月はその目つきがいつもよりも鋭い気がした。
「 山口 梨子さん だよね、この前の怪事件で窓ガラスが割れていた家の娘さんだよね 」
縞は女の子を見つめながら反応をうかがっているようだ
”なんだヤマグチリコって、この女の子の名前?
なんでこの子の名前を縞が知っているんだ?知り合い・・・でも無さそうだよな ”
葉月が数秒の間色々考えている間に、踏み切りがあがり女の子は走りだした
「 あ! 」
気づけば縞は走る女の子を追いかけている。周りの人はとても変な目で葉月達を見ていた
それもそうだ、女子生徒にこの町じゃ見かけない葉月達が話しかけて、
女の子は逃げて、1人は逃げた女の子をおいかけているのだから
” やばいよ・・・なんか俺達、すっげー変な人じゃねーか ”
籠の中で静かにしていた猫も突然にゃーにゃー泣き出し、葉月は焦った
ここに残って縞を待つか
それとも縞を追いかけるか
” えぇい! ”
葉月は女の子を追いかける縞を追いかけるという選択肢を選んだ
「 (元)陸上部をなめるなよおおお!殆どさぼってたけど! 」
大地を蹴り上げながら走り出し葉月は全力疾走で縞達に追いついたが、そこそこの速さで縞と女の子は走っている
結構な距離を走った後進む先が行き止まりになっていた。
これで女の子も止まる、そう縞と葉月の二人が思った時女の子は、その手前の古びたマンションの中に入った
げんなりする葉月をよそに、女の子はスカートの裾をひるがえしながらコンクリートでできた階段を駆け上る
「 な・・・なんてタフなんだ・・・俺っ息があがって・・・ 」
” ちきしょう、籠が重たい・・・! ”
そう葉月は毒づきながら階段を駆け上がった
「 はぁはぁ・・・ぉ、おい縞・・・なんで 」
階段の踊り場で猫のはいった籠を抱えながら息を荒くしている葉月をチラっと見てからも縞はひたすら階段を駆け上っていく
話は後で、そう言いたげだった。
「 ひぃ・・・ 」
結局、なんとか屋上までのぼりきった葉月は、猫の籠をドサッと置きコンクリの地面に尻餅をついた
女のこの方はというと、フェンスにもたれてへたっている
縞もそれなりに息は乱れてはいるが、全く大丈夫らしく、すぐさま女の子の方へかけよっていった
” なんだ、なんでこの子こんな必死に俺達から逃げたんだ。
確かに結構不信な二人だったかもしれないけど、走って逃げる事ないじゃないか
いや、むしろ二人からじゃなく、縞からか・・・? ”
「 おい、縞一体どういう 」
「 窓ガラス割ったのお前だろ 」
葉月が色々聞こうとすると縞は構わず女の子に話しかけた。
「 え?? 」
「 あの怪事件で窓ガラスが割れた山口さんの、
つまりお前の家の窓を割ったのは、娘のあんただよな、山口梨子 」
縞はまっすぐ視線をリコという子に向けながら言い放った
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