◆鬼の事情◆
-怪事件編-
【8】
エレベーターがあくと、相撲君が息をあがらせながらでてきた
そして次の瞬間葉月に襲い掛かってきたではないか
でかい壁にぶちあたった衝撃に葉月の体はバウンドして踊り場にいつのまにか転がっていた
「 ちょ・・・まっ・・・ 」
「 あんたら何してたんだよ! 」
なおも向かってくる巨体から葉月は転がったまま逃げれそうにない
” あんなのにもっかいぶつかられたら、俺内臓破裂で死ぬぅぅぅ ”
葉月がそう思った次の瞬間、何かが目の前に立った。
「 待ってくれ、こいつは何もしてない 」
葉月と相撲君の間に入ったのは縞だった、それでも相撲君は向かってこようとしている
「 ・・・し・・・ま 」
駄目だ、あんなのに投げ飛ばされたりしたらただではすまない
しかし背中をうった衝撃で葉月は必死に起き上がろうとしたがまだ起き上がれない。
「 しま・・・にげろ・・・ 」
そう葉月が叫ぼうとした時、相撲君の体が転がった。
「 あ・・・あれ?? 」
相撲君も何が起こったか把握できない様子だ
「 まぁ落ち着いて話を聞けよ 」
” そうだ、忘れてた、縞って普通の人間じゃぁなかった・・・や ”
葉月はそのまま数秒間意識を失った。
「 だいちゃん・・・ 」
「 りっちゃん!髪の毛ボサボサじゃない!なにもされてない?
どこか怪我とか・・・ちょっとほっぺた赤くない? 」
女の子の無事を確認すると相撲君はホッと安心したようで、やっと落ち着いてくれた
でもやはりこちらを見る目は敵意をもったままだ、仕方ないが
葉月もなんとか復活して立ち上がったが、首の筋を違ったらしくまだ痛<みがひかない
「 なんか勘違いしてるみたいだから言っておくけど
私達は話しだけをしようとおもって話しかけたのに、その子が勝手に逃げたんだぞ
別に危害を加えようなんて思ってなかったよ 」
平手打ちをくらわしておいて・・・と葉月は思ったがここは黙っておいた
また吹き飛ばされたらたまらない
「 ・・・りっちゃんになんの話しがあったっていうんだよ、
変な話じゃなければ逃げたりなんかしないだろ 」
「 それは、君にも大よその検討がつくだろ 」
縞の言葉に相撲君は黙り込んでいる
それを見ていた女の子がすかさず相撲君の袖をつかんだ
「 ねぇ、大ちゃんなの?木・・・倒したの 」
女の子の問に、相撲君はうなずきもせず、女の子を見つめた後
こちらに顔を向けて口を開いた
「 俺だよ、ガラスわったのも女の人おそったのも、木倒したのも 」
「 だいちゃん!?なにいってんの!? 」
縞はそれを怪訝そうに聞いている
一方女の子は相撲君の袖をつかんで必死に引っ張ってはいるが
巨体は揺れることもなく、話しを静かに続ける
「 全部俺がやったんだよ、それでいいだろ 」
「 よくないよ!私だよ!私がやったんだよ!? 」
「 そいつは知ってたんだよ、あんたがやったって事 」
「 違う、りっちゃんは何も関係ない、俺がむしゃくしゃしてやったんだよ
ごめんなりっちゃん 」
女の子はずっと違う違うと連呼している、葉月はどっちが本当なのかさっぱりわからない様子だ
「 かばうのが、君の優しさの形か、違うだろ
それじゃこの子は何も救われない 」
縞は相撲君の前へ行くと、遥かに上にある顔を見上げながら
厳しい口調で話しかけた、さっきよりもずっと静かだが、厳しい。
相撲君はずっと黙ったまま、縞はさらに追い立てるように言葉を続けた
「 君がこの子の幼馴染だっていうのは知ってる、
この子がストレスを溜め込む方だっていうのも知っていたんだろ
だけど聞いてあげる勇気がなかったんじゃないか?
だから今回この子がこんな事件を起こした事に気づいた君は罪悪感を感じたんだろ
自分がもっと聞いてあげていれば、こんな事にはって
だからこの子のアリバイのある時に公園の木を次々に押し倒していった
それはこの子から世間の目を逸らせる為なのと同時に
君のこの子への罪滅ぼしだったんだろ?違うか? 」
「 そうなの・・・?だいちゃん、おねがい、大ちゃん私の事をかばうのはやめて・・・ 」
女の子は涙ぐみながら相撲君の腕にしがみついている
相撲君はそれを優しい目で見つめている
どうやら相撲君はこの子の事が好きらしい、葉月にはそう感じ取れた。
「 俺、なにもしてあげられなかった、りっちゃんがしんどそうなのは知ってたんだ
でも中学に入ってから、俺ら学校であまり会話する機会が無くなって
それに、俺から離しかけたら・・・ほらこんな体系だろ
りっちゃん恥しいんじゃないかなってさ。
でもそれはただの逃げ口上で、本当はりっちゃんから悩みを聞く勇気がなかっただけ
殆どあんたの言うとおりだよ。俺なにも・・・ 」
相撲君は首を横にふって、目をふせてしまった
女の子も相撲君の腕に顔をおしつけてしまっている。
「 なにもしてあげられなかったなら、これからしてあげればいいんじゃないの?
ぶしつけだけどさ、君この子の事が好きなんだろ?
ならさ、これから君が聞いてあげればいいじゃないかな
これからは昔みたいに二人で色々会話を交わしてさ 」
葉月がそう話しかけると、女の子と相撲君は顔を真っ赤にしてお互いの顔を見合った
「 葉月の言うとおりだよ、今までできなかったなら、今からやればいい
別に今からやっても問題はないよ、しないよりはいい
あんたも人の目ばかりきにしないで余裕を持てばいい
まぁ、それに最近になってストレスが爆発したのも、きっと好きな子と喋る機会が減ったからだろうし 」
縞がニヤリと笑うと女の子は顔を真っ赤にしてうつむいてしまった
「 えっ?それって・・・? 」
「 だって・・・だいちゃんいつも部活とかで忙しそうで・・・ 」
「 なんだ、君ら両思いだったって訳か 」
結局好きな人と話す機会が減って癒される時間がなくなってストレスが爆発したって事か
葉月はちょっと馬鹿らしくなって溜息をついた。
「 そろそろ買い物しないといけないし、行こうか葉月 」
「 え!?俺らを警察にいわないのか? 」
「 なんで私達がそんな面倒くさい事しなきゃいけないんだよ、それでなくても無駄に走ったのに
別にいいだろ、ガラス割ったのは自分の家のなんだし
襲った女の怪我もはっきり言えば1週間でカサブタになってなおるような怪我らしいし
公園の木も根っこから抜けてたからそのまま植えれば問題ないみたいだし 」
「 それじゃなんで・・・それを言ってきたの?私達がやったって知っていたの? 」
縞はしゃがみこんで ウンショ と言って何かを持ち上げた
「 まぁ、こいつから聞いたとでもいっておくかな、こいつが恩返しで何とかしたかった、それでいいんじゃないか 」
「 ンニャ〜 」
「 え!?ねこちゃんじゃない!私の家、ママがアレルギーだから飼えなくて・・・
結局1日しか家においてあげれなくて・・・
なのに・・・ごめんねねこちゃん・・・ありがとう 」
「 俺の家も犬がいるから無理で・・・飯とかダンボールくらいしか用意できなくて。そうかお前か、ありがとうな 」
そういって二人が黒猫の頭をなでると、黒猫はペロペロと二人の手を舐めてゴロゴロと喉を鳴らした
” そうか、この猫が全部知っていて、縞に伝えたのか・・・
え?縞って動物の言葉もわかるの??
初耳だ・・・ ”
葉月は驚いた。
なんだかんだで、結局黒猫と共に葉月達はその場を後にし
黒猫は葉月の家で飼うという事になって、あの二人も大喜びだった
買い物をして疲れきって帰った時にはもう時計は夜の6時を回っていた
夕食を終えて、風呂をすませ外葉月がでいつもの場所に座って涼んでいると縞がやってきた
「 あーそこは私の場所だぞ 」
「 はいはい、どうぞ 」
縞は薄紫色の着物をひらりと舞い上がらせながら賽銭箱の上に座った
赤い角に肩まで伸びた銀色の髪、赤い瞳が本当に暗がりでもはっきりわかる
これを見ると、あぁやっぱり縞は、人間じゃないんだなと葉月は再確認させられる・・・
「 ありがとうな 」
「 え?何が? 」
縞からの突然の感謝の言葉、一体何事だ。葉月は目を丸くした
「 ほら今日さ、梨子って子が私になんか言ったとき
怒ってくれただろ 」
「 い、いや、いいよ別にそんな・・・ 」
” あぁ・・・そういえばそんな事が・・・
でもあんまり覚えてないんだよなぁ
なんで怒ったんだっけな、まっいいか ”
それよりも葉月は気になっていた事があった。
「 なぁ、縞はやっぱしさ・・・動物の言葉とかわかっちゃったりするの? 」
「 わかるわけないだろそんなの 」
「 え!?んじゃなんであの事件の事しってたんだよ 」
「 そりゃ黒猫から聞いたからだよ 」
「 でも動物の言葉わかんねーんだろ? 」
「 わからないよ 」
・・・
” なんだこれ、俺からかわれているのか? ”
” なんや遊ばれてるなぁ ”
葉月の頭に突然誰かの声が響いた
「 な、なんか今・・・ 」
「 おいセツ、お前からちゃんと説明してやれよ、私はもう面倒臭いから説明すんのいやだからな 」
縞は賽銭箱の上に寝そべってしまった
” セツ??え?なに誰?幽霊?? ”
” 誰が幽霊やねん失礼なやつやな ”
「 うわ!またなんか聞こえた! 」
すると目の前に黒猫がストンと降りてきた
”ま、まさかこいつが・・・?まさかな俺、動物の言葉とかわかんねーし ”
” まさかもないって、そっちがわからんでも、
こっちがそっちに送ってるんやからわかるにきまってるやん ”
「 うえ!なんだよこれ!あんた化け猫かなんか!? 」
” おーめっちゃ驚きはるかな思ったけど、さすが慣れてはるんかしてまぁまぁの驚きやね
化け猫か、人間はそう言うてるな、ちょっと長生きでちょっと他の猫とはちゃうだけやねんけどな ”
「 でも・・・俺あんたの声なんて今まで聞こえてなかったんだぞ 」
葉月がそういって冷や汗をかいていると黒猫は肩をすくめて近寄ってきた
もっとも、猫はなで肩で肩という肩はないんだが
” だから、それはわしがあんたに言葉を送ってなかったからやっていうてるやろ
まだ最初は縞はんにしか言わん方が、あんたもパニックにならんでええかな思ったんやわ
もっとも、なんぼわしでも相手が受け付ける力がないと声を送ることはできん
今朝の夢でもそうやけど、葉月はんはよほど勘がええらしいな ”
「 か、勘って・・・霊感みたいなもん? 」
” まぁ、適当にいえばそんなとこやろな ”
” そうか・・・それなら縞が町ですんなり道を進んで行ったのも
事件の事を知っていたのにも理由がつく ”
” そうそう、あれはわしが籠の中から誘導してたんやわ ”
「 えぇいくそ、あんた俺の考えも読めるのかよ 」
” そりゃわしはあんたの頭に直接言葉をおくっているからな
いわば繋がっている感じやから、あんたの考えてる事もわかってしまうわ ”
「 プライバシーの侵害だよ、まったく 」
葉月が口をとがらせて文句をいうと、黒猫はニヤリと笑った風に見えた
” それはすんませんな。 そんなら改めて初めまして
わしセツ言いますわ、当分ここのお世話になるみたいなんで
よろしくたのみます、葉月はん ”
「 それじゃさ、セツは全部しってたのかよ、あいつらの事 」
” えぇ知ってましたで、なんせこっちは言葉は送れなくても
あちらさんの考えてる事わかろうと思えばわかるしなぁ
でもさすがに梨子はんが暴れだしたのにはびっくりしましたで
しまいにゃ女の人襲ってはるやん、これはあかんおもいましてな
途中で止めにはいったんやけどな。いかんせんわし猫やろ
猫は所詮猫、やれることなんてしれてますやん
そやから、縞はんにしてもろたんですわ。
幸い縞はんもわしらとよう似たようなもんやったし ”
「 なんで猫がそこまであいつらにしてやるんだよ 」
葉月がそう聞くと、猫は目を細めて首をかしげた
” まぁきまぐれと、一宿一飯の恩 とでもいっとこうかいな ”
” なるほどね・・・
縞が普通の人間じゃなかったから、ついてきたってわけか
まったく、縞はとんでもないのを拾ってきてくれたよ・・・
この年増め・・・ ”
葉月が縞に目をやると。賽銭箱に大の字で寝てしまっていた
” まぁそういわんと、なかようしたってくださいや ”
” あ、今のは縞に内緒だかんな、絶対言うなよ、年増って所 ”
葉月がそう頭の中でしゃべりかけると、
セツはニマニマとしながら、わかっとりますよと答えた
こうして、薫宮家にまた変な家族が増えたのだった
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読んでくださってありがとうございました、怪事件編はこれで終わりです
また次のお話で縞達とお会いしましょう
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