-霧幻mugen-
-ユメ-
口人間の足音が完全に聞こえなくなるまで、息を止めていた気がする
たった数分、もしかしたら数秒の間だったのかもしれない
でもそれは長く、そして生きた心地のしない時間だった。
「・・・さむ・・」
自分の居る場所がトイレを分かったのは、薄暗い部屋にある独特の洗面所と
見慣れたドアを見てからすぐだった
中は春先の服装には少し辛いくらいに気温が低かった
手先は氷みたいになってしまっている。
「 ・・・・・ ・・・ 」
人の声が聞こえたので、淡い期待を抱きながら窓から外を覗く
すぐにその期待は裏切られ、先ほどの口人間が相変わらず高らかに笑って騒いでいた。
何をするでもなく、ひたすら笑っている。
どしよう・・・
何をすればいいのか、どうすれば帰れるのかさっぱりわからない、これが夢なら
待っていればその内、目が覚めるのに
起きて、ご飯を食べて、歯をみがいて身支度して
学校に行って、特に仲良くもない友達と馬鹿騒ぎして
そして家に帰って話をあわせるために好きでもないTV番組をみて
ご飯を食べてお風呂にはいって寝て・・・また起きて
・・・
振り返ればなんてつまならい人生を送っているんだろう
私ってつまんない奴 つまんない
パンッ!
思いっきり両手で顔を叩いた
しっかりしろ、今そんな馬鹿げた事考えてナイーブになっている時じゃない
カガミに目をやると、化粧でぐしゃぐしゃになった自分がこちらを見ていた
こんな顔なら化粧を落としてしまったほうがいいな・・・
冷たい水を静かにだして、できるだけ素早く顔を洗った
眉毛の無い自分はとても情けない顔をしていた
夢?そうだ、これはもしかして夢なんじゃないだろうか?
考えてみればこんな現実に在り得ない出来事があるはずがない
顔をつねってみると、痛いのか痛くないのか、寒いせいかあまりわからない
なんとなく痛い気もする・・・
とりあえずあのドアの所まで行こう、今のところ唯一ここと繋がっているのはあのドアだけなんだ
他をあたっている暇があるならあのドアをどうにかして開けて、
帰る方が得策じゃないだろうか
トイレの用具要から、武器になりそうな物を漁った。あるのはモップや洗剤、ゴム手袋、
どれも役に立ちそうにない。
外に 出るしかない
外に恐る恐る出て、窓の外を確認しようと窓に近寄ったとき
『 お姉ちゃん 何処いくの 』
後ろを振り返ると、あの子供がそこに居た
「 あぁ・・・何処いってたのってこっちの台詞よ・・・ 」
生き別れになった親が子にすがりつくように、子供の傍にへたりこむ
『 鬼ごっこ楽しい? 』
「 鬼ごっこ・・・?・・・ふふそうねすごく楽しいわこの鬼ごっこ 」
皮肉をこめてそう吐き捨てる
子供は帽子から見える小さな口とピンク色の頬を笑わせる
何処かで見た事ある顔だなと思った、でも思い出せない
何処で見たんだろう
『 良かった、お姉ちゃん楽しそうで 』
そう言うと子供は階段を駆け下りていってしまった
あ、そっち行ったらあいつらが!
階段を下り、校舎の外にでた、
門の所までいくにはどうしても口人間のいる数十メートル離れた道を通らなければいけない。
子供は門の前でこっちに向かって手を小さく振っている
あの子は一体どうやってここを通り抜けたんだろう
小さいから気づかれなかったんだろうか、それなら私も今だけでいい、小さくなりたい・・・
落ちつけ、大丈夫、静かに、気づかれないように、
うまくやれるうまくいく、大丈夫・・・
息を殺して一歩踏み出す、音をたてないように、焦らないように一歩一歩進む
しかし奴らはこちらに気づいたようで、一斉に向かってきた。
全速力で逃げたが、やはりすぐに間合いをつめられ、肩をつかまれた、
肩の向こうからはけたたましい笑い声。
「 ひゃあ!!」
それを見ていた他の口人間達が、大きな声で雄たけびをあげはじめた。
その声を聞いたのか、何人もの口人間が、校舎の中から外に出てきた
う、うそ・・・こんなに居るの!?
愕然としたのもつかの間、何人かの奴らが襲いかかってきた。
夢中で来る手来る手を払いのける
しかし抵抗もむなしく、襲い来る波にのまれるように
体は沈んでいく
沈んでいく際に見えたのは、あの子供の姿
子供は帽子をとると、こっちをみながら満面の笑みをうかべている
ま・・・まーくん
まだ私も小さい頃、一人っ子だったせいか
私のことを、お姉ちゃんと呼んで慕ってくれていた、まー君
鬼ごっこが大好きでいつも何かあれば鬼ごっこをしていた、まー君
まー君は少し変った子だった
まー君が言うには、夢の中にもう一つ街があって
眠ればいつでもそこに行けるとの事だった
まー君は私に何度も夢の話を聞かせてくれた
そんなある日
『 あのね今日お姉ちゃんを夢で誘いにいくから待っててね 』
そう言った日の夢には確かにまー君が夢にでてきた
それから何度か一緒に遊んだ
その夢の中でまー君と鬼ごっこをするのが楽しみだった
そうだ・・・ここはあの夢で遊んだ町だ・・・
まー君は起きている時も夢の世界が忘れられないようでいた
『 僕ずっとあっちにいたいなぁ、ね、お姉ちゃんもそうでしょ? 』
「 う〜ん 私はこっちのほうがいいかな、こっちがつまんなくなったら行きたいかも 」
『 それじゃつまんなくなったら、一緒にあっちで遊ぼうね!迎えにいくから!約束だよ
それまでに一杯友達集めておくから!
そしたらみんなで鬼ごっこしようね! 』
それから間もなく、まー君は居なくなった
当時は誘拐だとか、神隠しとか、拉致じゃないかとか色々いわれたけど
結局見つからずに10年以上が経って行った
今思えば本当にあの夢は不思議な出来事だったと思う
でも年を重ねる語とに、あれはただの夢で偶然だったと思うようになり
いつしか忘れていった
そのまー君が今、目の前にいる
そっか・・・
まー君いなくなったんじゃなくて、こっちの世界に来てたんだ
「 ・・・まーくん・・・ 友達ってこれのことなの・・・ 」
もっとまともなの いなかったの
あぁ駄目だ・・・なんかもう笑えて来た
どうせ帰ってもつまんないんだし
まー君とまた、あの頃みたいに遊べるのなら
もう ど う で も い い か も
『 お姉ちゃん、あっちつまんなかったんでしょ
だから、約束どおり迎えに来たよ 』
まー君はにっこり笑い
私はそのまま
沢山のクチの中に
沈んでいった
完
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トビラ ヘビ コドモ クチ
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この作品は、かれこれ4年程前にみた夢を元ネタに書いたものを
今回少し手を加えてUPしたものです
あまり長くなると惰性になってくるので潔く4話で切りました
背景画像も3話まではつかっていましたが
あえてこの最後の話には背景をいれませんでした
読んでくださった人が各々自分の想像する背景を思い描いてくれれば
大変嬉しく思います
最後になりましたがつたない文章を最後まで読んでくださって有難う御座いました。
060509
縞
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